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 志穂はそこまで考えて、なにか、わかることがないか、調べることにした。校舎を歩き、建物の状態や掲示物を調べた。保健室の前に貼ってあった、保健ニュースの日付が一九××年になっていた。
 ――うそ、ホントに私は過去にいるの!
 しかし、どうすればいいのだろうか。この状態では家には帰れない。まだ生まれてもいない人間には帰る家など存在しない。しかし、十九時には学校は閉まってしまう。
 途方にくれて廊下を歩いていた志穂に不意に話し掛ける声が聞こえた。
「ねぇ、キミ、ちょっと。」
「え? あ、なんですか?」
志穂は声のした方を向き、答えた。しかし、そこにいたのは先生ではなく、制服を着た男子だった。
「折角、過去に来たんだから、少し見学していったらいいじゃん。」
「え! 何で、私が未来から来たなんて知っているの?」
「そりゃボクが呼びだしたんだから。」
「! 君が呼びだしたの? じゃあ、今すぐに帰して!」
「キミが久しぶりにほこらの前に来てくれた人だったから。キミも学校の過去を知りたいんじゃない?」
「まぁ、そうだけど。」
「じゃあ、行こう!」
その少年は半ば強引に志穂の手を引っぱっていった。廊下をほぼ走るような速さで進む。志穂は手を振りほどこうとしたが、力が強くて振りほどけなかった。志穂は諦めて少年が引っぱる方へ走ることにした。
二人は、校舎を隅々までまわった。どこも志穂の知っている学校よりも新しく、生徒会館の階段も壊れていなかった。二人は庭園のベンチに座った。志穂は少年が走っていたので、とても疲れてしまった。
「そういえば、君は何故、私を未来から呼び出したの? ほこらに来たからって理由だけじゃないでしょ?」
志穂は少年にそう聞いてみた。ほこらに来たからという理由だけで過去に連れてこられたなどとは思いたくなかった。
「あー、やっぱり、バレてたか…」
 少年は笑い、
「もちろん、キミに頼みがあるから、わざわざ過去に来てもらったんだけど。その頼みっていうのは、簡単に言えば、この学校にある不思議な本を守ってもらいたいんだ。その本はこの学校の存在そのものなんだ。なくなったり、傷がついたりすると、学校そのもの存在が消える。もちろんキミもずっと学校にいるわけじゃないから、キミが卒業するまででいい。キミが卒業するまでに新しい守護者を探しておくから。」
 ここまで少年はほとんど一息で言った。
「ちょっと待ってよ。そんな本一冊でこの学校の存在がなくなったりするなんて、信じられるわけないじゃない!」
「でも、事実なんだ。その本は開校以来ずっと大切に保管されている。それに現にその本が一度傷がついたときに、食堂の柱が折れたことがあるんだ。」
「そんなこと、偶然じゃないの?」
「じゃあ、実際にその本を見てみればわかるから。本がおいてあるところに行こう。」
 少年はまた半ば無理やりに志穂をひっぱって行った。
 二人は二棟のわきにある建物の前にいた。志穂の時代では、『いちにっぱ』と呼ばれる倉庫である。その昔、男子更衣室だったらしいが、このときから既に倉庫として使われていたらしい。
 少年は扉を開け、中に入っていった。志穂もそれに続く。テントや支柱などが床においてあり歩きづらかった。なんとかそこを抜け、奥にある本棚の前まで行った。少年はその本棚の中から、木箱をとりだし、それを開けた。中には古ぼけた本が一冊、大切にしまわれていた。
「これが、この学校の存在の本だ。」


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